血液透析では、1分間に200ml以上の大量の血液を体外に取り出す必要があります。
しかし、通常の静脈は血流量が少なく、また繰り返し針を刺すことには不向きです。
一方、動脈は血流量は多いものの、体の深い部分にあり、直接針を刺すのは危険であり、神経も近いのでとても痛いです。そこで、大量の血液を体外に取り出すための手術を行う必要があります。
大量の血液を体外に取り出すために身体に造設するものの総称をバスキュラーアクセス(VA)といいます。
バスキュラーアクセスには5種類があり、身体の状態に最も適切なバスキュラーアクセスを選択します。

バスキュラーアクセスは、血液透析を安全かつ効率的に行うための「命綱」とも言える、なくてはならない存在です。
当院では、以下の手術を実施しています。
自己血管内シャントは、患者さん自身の動脈と静脈を直接つなぎ合わせる手術で作成します。動脈の血流が静脈にバイパスすることで、静脈が太く発達し、透析に必要な血流量が得られるようになります。
日本では、血液透析患者の約90%が自己血管内シャントを利用しています。
人工血管内シャントは、患者さん自身の血管が細いなどの理由で自己血管内シャント(AVF)の作成が難しい場合に選択します。
生体適合性の高い素材でできた直径5~6mm程度のチューブ状の人工血管を、動脈と静脈の間に埋め込み、つなぎ合わせます。
当院では、e-PTFE※1という素材の人工血管を使用します。
※1 e-PTFEはエコー画像に映るので、エコーによる定期検査や放射線被ばくをしないエコー下VAIVTが実施可能です。
動脈は血流量が多く、透析に必要な血液の量も簡単に確保できます。しかし、動脈は筋肉の下を走っているため、針を刺したり止血したりといったことが簡単にはできません。そこで、動脈の位置を皮膚に近いところまで移動して、針を刺しやすくしようというのが動脈表在化です。動脈表在化では血液を抜き出すのは動脈から行いますが、戻すのは静脈となります。
長期留置カテーテルは、血液透析を行う際に、首や胸、脚の付け根などの太い静脈に挿入し、長期間留置して使用します。このカテーテルを使用して、血液を体外に取り出し、透析器で浄化した後に体内に戻します。短期留置カテーテルにはないカフがついていて、抜けにくい構造になっています。
長期留置カテーテルは、主に以下のような場合に選択します。
短期留置カテーテルは、透析療法を緊急的に開始しなければならないときに一時的に使用されます。首や足の付け根の太い静脈にカテーテルを入れ、カテーテルから血液をとり出し、透析器を通って浄化された血液を身体へと戻します。
基本的に④長期留置カテーテルと同じですが、短期留置カテーテルにはカフがついていないので、長期留置カテーテルよりも抜けやすく、感染リスクが高いです。
なので、一時的な緊急処置にのみ使用します。